大阪高等裁判所 昭和51年(ネ)685号 判決 1977年10月28日
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
(双方が求めた裁判)
一 控訴人
(一) 原判決を取消す。
(二) 訴外中村美世(旧姓安田)が被控訴人から負担する昭和四八年一二月一二日付消費貸借契約に基く二、〇〇〇万円および五〇〇万円の二口合計二、五〇〇万円の債務につき、控訴人の被控訴人に対する連帯保証債務が存在しないことを確認する。
(三) 被控訴人は控訴人に対し、原判決添付目録記載の各不動産について、京都地方法務局向日出張所昭和四八年一二月一四日受付第二七三三二号(あ)(い)抵当権設定登記ならびに同出張所同日受付第二七三三三号所有権移転請求権仮登記の各抹消登記手続をせよ。
(四) 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
二 被控訴人
主文同旨。
(主張)
当事者双方の事実上の主張は、左記のほかは、原判決事実摘示のとおりであるから、引用する。
一 控訴人の陳述
(一) 原判決は乙第一号証の連帯保証人担保提供者欄にある「安田サメ」の記名を、控訴人の自署である旨認定した。しかし、これが誤りであることは甲第二号証の安田美世の手紙によつて明白である。
また、仮に自署であるとしても、それは「クーポン」に入つたら便利であるとすすめられ、「クーポン」に加入する目的で署名したにすぎないこと、原審の控訴人本人(第二回)、原審証人石川鈴子の各供述により容易に認定できる。
(二) 控訴人は、昭和四八年一二月二七日、所有の土地を四、四七〇万円弱で他に売却(甲第三号証)しており、資金は潤沢であつた。その頃、もし安田美世が金員を必要とした場合には、控訴人自身において融資に応ずることが容易であつたため、本件のような高利の借用金債務について、控訴人が保証をする筈がない。控訴人としては、美世が金員を必要としている事実を全く知らなかつたため、前記土地売却代金を金員では受取らず、代金四、一九〇万円余については、相当な代償地を受取ることに因つて清算した。このような点から考えても、乙第一、第五号証にある控訴人の署名が、被控訴人主張の保証の趣旨以外の目的でなされたことは明瞭である。
二 被控訴人
原判決の事実認定は正当である。もし、控訴人がクーポンのために署名したことがあるならば、それは本件とは無関係な別異の文書である。なお、甲第三号証によるも、本件貸借当時、控訴人が潤沢な資金を擁していたとみることは相当でない。
(証拠)(省略)
理由
控訴人の当審における主張立証によるも、原判決の事実認定を左右することはできないところ、当裁判所も原裁判所と同一の理由により、控訴人の各請求を棄却すべきものと判断するので、原判決の理由説示を引用する。
よつて、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから棄却すべく、控訴費用の負担については民訴法八九条を適用して主文のとおり判決する。